Toll様受容体が認識する病原体側の細胞壁成分などの構造解析や?合成メカニズムの研究

体内に侵入した病原体を検出するシステムの一つとして、Toll様受容体(TLR)が知られています。この受容体と結合する病原体側の細胞壁や膜構造物の成分について、構造解析や生合成メカニズムの研究を行っています。
患者から分離された病原性のある非結核性抗酸菌のゲノム解析を最初に行い、対象となる遺伝子群の塩基配列を決定しました。次に、TLRに認識されると推定される糖脂質の合成に関連する遺伝子を同定し、非病原性抗酸菌で過剰発現またはCRISPR-Cas9システムで遺伝子破壊を行った変異株を作製し、得られた細胞壁成分の分析を行いました。
このような細菌に対して遺伝子操作を行うことで、試験管内では不可能な不溶性の細胞壁成分に新たに水溶性の糖鎖を添加することが可能であることが、変異株が産生した細胞壁成分の分析により明らかになりました。また、糖脂質の合成経路やメカニズムもこのような研究から明らかになりつつあります。抗酸菌において機能遺伝子を破壊した変異株の作製については、多くの研究者から依頼されています。
本研究のような抗酸菌の代謝反応で重要な酵素の特定は、成人では効果が低いM. bovis?BCGワクチンに代わる新規のワクチンのターゲットの分離?同定につながる研究となります。
前田 伸司 教授
- 学位/博士(薬学)
- 研究分野/微生物学、感染症学
- 研究テーマ/1 体内に侵入した病原体を検出するシステムの一つとして、Toll様受容体(TLR)が知られています。この受容体と結合する病原体側の細胞壁や膜構造物の成分について、構造解析や生合成メカニズムの研究を行っています。
2 抗菌活性物質の探索のため、既に市販されている抗がん薬を使用し、緑膿菌やセラチア菌など院内感染に関連する菌に対する抗菌活性を調べています。
3 細菌の遺伝子破壊株を作製するための効率的な手技や方法の確立を行っています。
4 病原体の型別を行うことで、発生した集団感染事例の感染経路を推定する手技の開発を行っています。